私を迎え入れた女性は、五十嵐先生同様絶句した。


「すみませんが、この生徒をあずかっていてくださいますか。

すぐに親御さんへ連絡をしますので」


「……え、ええ……」


「至急、担任にも報告してこちらへ向かわせますので、それまでどうか」


「はい、はい、分かりました」


五十嵐先生はこそこそと話をすませると、足早に出て行った。


この保健室から。




どうして。


どうして私は保健室に連れて来られたんだ。


アリィやカナエ達は体育教官室だったし、他の校則違反の生徒だって運動場に集められると相場は決まっている。


なぜ私だけ、こんな薬品臭くてやたらカーテンが多い白い部屋に閉じこめられなければならないんだ。


「どうして」


口に出すと、保健の先生はわずかに肩を揺らして頬を引きつらせた。


「ま、まあ、立ちっぱなしもなんだし、ほら、こっちへ来て座って。

お茶でも淹れましょうか」


四十代半ばのこの女性は、まるで腫れものにでも触れるかのように、やんわりとした口調を作りこんで、私のためのパイプ椅子を用意してきた。


その態度がしゃくに障って、私はできるだけ感情をおさえて疑問をぶつけた。


「どうして怒らないんですか、先生も、五十嵐先生も。

私、校則違反じゃないんですか」


「その前に、座りましょうよ。少し落ち着きましょ」


「私は落ち着いてます質問に答えてください!」