討論会はやがて宴会へと様変わりし、解散の声があがったのは十一時ごろだった。
いつもなら十時には寝てしまうのだが、父に謝るために私は起きていた。
義務感と、部屋の外のうるささも手伝ってくれたおかげで、目はずっと冴えていた。
「じゃあ、今日はお疲れ様でした」
「あぁ、お前ら明日遅刻するなよ」
「分かってますって、部長」
酔ったせいか、みんなバカみたいに明るい。
騒がしさが遠ざかり、ドアのしまる音を合図に私はベッドから降りた。
そっとドアを開けて居間に出る。
玄関から戻ってくる父の足音が聞こえてきた。
長い間待っていたので、告白することへの緊張はやわらいでいる。
大丈夫、言える。
「おとうさ……」
「雅之さん、私、携帯を忘れちゃったみたい」
声をかけようとした私を、女性の声がさえぎった。
雅之さん。
聞こえた瞬間に、居間に戻ってきた父と目が合った。
父の顔に、明らかなあせりの色が浮かぶ。
その顔は、何?


