「……」
意識をそらしていたって、やはり耳に障るものは障る。
批判ばかりのあんたより、実際に行動して、そういう舞台に立つまでの行程を踏んできたその女優さんのほうが数倍立派だと思うんだけど、
そんなセリフを腹の底に漂わせていると、アリィは急に私の肩を叩きながら笑いだした。
「やだ、ゆっぴー、そんな難しい顔しないでよ。冗談だって、冗談」
冗談だって?
あんたの冗談は笑えやしないどころか、ただただ不愉快でしかない。
だいたい、ケラケラ笑いながら、どうしてそんなに強く私の肩を叩く必要があるんだ。
頭にくる。
頭にくるけれど、怒鳴るほど我を忘れることもできない。
「あはは。やめてよアリィ、痛いって」
精一杯の作り笑いで制止すると、アリィは照れたようにワザとらしく肩をすくめて叩くのをやめた。
ああ、だから爪の先ほども可愛くないってのに、どうしてそんなにぶりっこができるんだ。
怒りを通り越して虚しさが胸の中で幅をきかせはじめたとき、待ちに待った扉を開く音がした。
「ごめんなさい、会議が、長引いてしまって……」
入室してきたのは、息を切らして頬を上気させた若い女性教師。
「いいよー、気にしないで」と調子のいい男子生徒がちゃちゃを入れ、笑いが起こる。
女性教師は、照れたようにはにかんだ。


