四面楚歌――意味は周りが全て敵で、完全に孤立することを指差す。

気のせいだか、今の自分の状況にこの言葉が似合っているような気がした。

彼女を独り占めしてしまいたい。

唇だけじゃなく、全てを奪ってしまいたい。

躰も、心も、何もかも、全て俺で汚してしまいたい。

彼女に会うたびに、自分の中で大きくなって行く欲望は、自分の手でコントロールできないくらいだ。

「――バカなもんだ…」

皮肉を言うように呟いた瞬間、俺は気づいた。

――彼女に、恋をしてる。

1人の女として、彼女に恋をしている。