上質な絨毯が敷き詰められた部屋の中、大仰な机で一人の男が書類に目を通していた。

皺一つ無い軍服とデスクワークが様になる姿はその人物が上級の軍人であることを示している。

その男の前には部下であろう軍人が直立不動のまま男が書類を読み終わるのを待っていた。

「わかりました。

実験の方はなかなか良好に進んでいるようですね。」

男は書類から顔を上げるとニコヤかな笑みを浮かべる。

年の頃は30代手前だろうか、縁なし眼鏡の優男、彼を表現するのはそれが妥当だろう。

その声は以前に霧野と電話で話していたものと同じどこか感高いものである。

「はい。

技術研究部からは当初の目標は達成可能だと報告を受けております。」

部下は直立不動のまま答える。

「それは良かった。

今回の実験が成功すれば実用化も近づきますからね。」

男が浮かべる笑みはどこか爽やか過ぎて何処か嫌悪感すら覚える。