PRAY MACENARY

コツ、コツと靴底がアスファルトを打つ音だけが夜空に吸い込まれる様に響き渡る。


その足音は発信源よりやや離れたAMの機体格納庫の中でも認識できる程度には伝わっていた。

しかし、そこにいる人間には聞こえていないだろう。

格納庫の爪狐の前、霧野は物思いに耽り自分専用にチューンアップされた機体を見つめていた。

闇と同化するような漆黒をベースとした塗装。ボディに刻まれた数々の細かな傷は霧野が戦場で生きてきた年月の長さを示している。

この機体に乗って何年になるだろう。霧野はそう考えながらそっと爪狐に触れる。

冷たい筈の金属で作られた装甲は霧野に仄かな温かみを伝えた。

その温かみが霧野が爪狐に乗っている理由である。

爪狐は、現在戦場で主戦力として運用されているAM、狼牙等と比べ旧式の機体である。

機体としては現在の主流機の一世代前のものになる。

そもそも機体数自体も多くなく、現在において戦場でその姿を見ることは少ない。