PRAY MACENARY

明日、無事に生き延びたとしてもその翌日、敵の40機のAMがバラックを包囲していてもなんら不思議はない。

ひいて言えば明日からはいつ死んでも不思議はない。

そんな考えが頭の片隅にあってだろう。誰も他人の、その人自身の時間に関与できないでいた。

この場にいるものはプロの傭兵として戦場で死ぬ覚悟はとうの昔にできているだろう。

だから一時、心が覚悟を思い出すまでのほんの一時だけの静かな夜である。


そんな夜の静寂から逃れるように一台の車が排気音を辺りに散らしながら基地を後にした。

「舩坂か…。」

パタンと本を閉じた白井が窓から闇の中を駆けて行く車を見送りながら、ポツリと呟いた。

「リンさんの…所に行ったのかな…。」

白井の呟きに反応し、佐良もそう呟いた。

「こ~んな時に女のところなんて~。」

弥羽は二人の呟きで船坂が何のために外出したのかを察したようで、少し呆れた表情を覗かせたが、やがて思い直したように

「…違う…ね。

こ~んな時だから…かな。」

そう言うと静かに部屋を後にした。