「この度の出撃においての独断先行および命令違反。

処分を決めるにあたり弁明、釈明があれば聞こう。」

バラックの屋舎内、霧野の執務室に柔らかな日光と共に満ちていくのは霧野の無機質な声。

デスクに座る霧野の前には姿勢を正した弥羽が直立している。

「特に有りません。

ご認識の通りの事実が全て、全ては私の責任です。」

弥羽の口調はいつもとは異なる軍人のソレ。
緩んだ口調はどこにも見受けられない。

AMRSのことは一言も口にしない。こちらに転属に際して軍本部からの厳命でAMRSについては箝口令がしかれている。

今回の転属はあくまでバラックに対する援軍、AMRSのことは他言無用である。

「私の認識の通り…か。

では、あの行動はAMRSが発動した結果起こったもの。

ということでいいのだな。」

弥羽の表情が若干曇る。

AMRSについてはどの程度のレベルかは聞かされていないが、機密事項であり、軍の中でもその存在を知るのは一握りであるはずだ。

軍の高官ならいざしらず、何故、こんな辺鄙な土地の一傭兵会社の人間がそれを知っているのか。

弥羽の顔はただ色を無くしたまま霧野を見つめていた。