弥羽はまどろみの中、見ていた。

身体の認識は無く、自分が立っているのか座っているのか、今どのような状態にいるのか、何も判らない。

ただ外界を映す映像だけを弥羽は認識していた。

目蓋は閉じられたまま、ただ脳の視覚野は外部から送られてくる視覚情報を認識し、それを映像として作り出す。

弥羽が見ているのは自身の乗機である隼の上下左右360°の全て、人がもつ視界の限界を超えた視界である。

脳に送り込まれた視覚情報の全てを瞬時に認識し、映像内での拡大と俯瞰が同時に行われる。
視覚のもとを別とする目が複数ある状態。

それらの目が得た視覚情報が全て弥羽の中に流れ込んでくる。

しかし、弥羽はそれを見ているだけ、身体を動かすわけでも、AMを操縦するでもない。

ただ、ただ、外界を眺めているだけ。