自室で制服に着替え、学校に行く身支度を整えると、今日の朝ごはんはなんだろう、なんてぼんやりと考えながら階段を下りる。


朝は毎日きちんと食べる派。

食べないとお昼まで体力も集中力も保たない。

それに何より、幼い頃から朝食だけはきちんと取るように躾けられてきた。

別に食べることは嫌いじゃないからそれ自体に不満はないけれど、寝坊して学校に遅刻しそうな日でさえも食べ終わるまで家から出してもらえないのにはちょっと困っている。


そんなこんなで、半ば刷り込みのように部屋を出たらまず最初に朝食に思いを馳せつつ、階下へと下りるのだけれど。


ダイニングに足を踏み入れた途端、どこかゆっくりとした日常の平和な思考は終わりを告げた。

予想外も予想外、とんでもない光景に目を見開く。



「えっ、どうして? なんでみんないるの?」


一家勢揃い。

なぜかおじいちゃんとおばあちゃんまでいるし……。

皆揃って仲良く朝食のテーブルを囲んでいる。



家族が家にいて悪いかと訊かれれば、答えはノー。

けれど目の前のこの光景はただの日常として看過するのにはいささか厳しいものがある。

それは我が家が少し変わった家系だから。




実は私以外、家族みんな芸能人なのである。

おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもとにかくみんな芸能人。

父方の従兄(いとこ)も叔父さんも叔母さんもそう。


おじいちゃんとお父さんと叔父さんは俳優。

おばあちゃんとお母さんと叔母さんは女優。

お兄ちゃんは国民的アイドルグループ【Brave×Star】のリーダー。

従兄の響(キョウ)もアイドル・千宮寺響(せんぐうじ ひびき)として活躍中。


だからみんな美形だし、親戚一同で集まれることはまずないけれど、家族が揃うだけで無駄に派手な集団が出来上がる。

一方の私はというと、女性としては少し高めの身長以外平凡そのものの容姿。


ううっ、私だって綺麗に生まれたかった。

家族みんなが“華麗なる一族”な雰囲気を醸し出してるから、平凡容姿の一般人な私だけかえって浮いてしまっているように見えるのだ。