「こらこら。由優ってば、また一人で本の世界に逃げようとしてる…!」 「あ、ちょっと…!静乃(シズノ)。か…返してよ。」 パッと取り上げられた本を辿って視線を上げると、親友の静乃が呆れ顔で立っていた。 「そろそろ話し掛けてみたら?」 私の前の席に勝手に座ると、チラリと教室の入り口近くの席を見た。 「そ……それは無理。」 私も少しだけ視線を向けた後、すぐに逸らしてしまった。