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既に空の端がオレンジ色に染まっていた。
 
そっと開けたドアの隙間から差し込む夕日は眩しく、風は冷たい。
 

だけどその少し隣に彼の背中を見つけて、一気に胸が締め付けられる。

 
もう後ろには戻れない、そう決めていたのに。
 
いざ屋上に出てみると迷いが生じてしまう。



「……弥八子?」
 

なのに彼はわずかな音に気付いてしまったのか。
 
ゆっくり振り返って私の名前を呼んだ。


「あ、あのね」
 
返事をしないわけにもいかない、だけど正直まだ心の準備が整っていない。


「ちゃんと料理班の会議に出ろって、有君が」
 
そんな中思い出したのは、さっき有君が言っていたこと。
 

出なかったせいか彼は有君と同じ飲み物係に決定していた。

有君に溜め息をつかれながら。