冷まして味見をして、それからラッピングをしなきゃな、と考えていると廊下から音が聞こえてきた。

トントン、と階段を下りてくる音。
 

身体に少し力が入ってしまう。
 
それでも大丈夫、と自分に言い聞かせながらカップケーキを網台の上に並べる。
 

近付いてきた足音が、止まった。
 
目をやればキッチンの入り口の前にお兄ちゃんが立っている。


「どうしたの?」
 
未だに声が震えてしまう自分が情けない。

でもどんなにさりげなさを装っても、どうしても駄目だった。
 

だけど。

「……いや、いい匂いがしたから何かと思っただけ」
 
笑顔でもなかった、それでも怒ってもいなかった。

お兄ちゃんはただそう素っ気なく言って廊下に戻ろうとする。