16歳、前進

「あ、オレは永井。隣のクラスなんだけど」

永井。どこかで聞いたことある……と考え出して数秒後、あのときのことを思い出した。


「皐次郎君のライバルの」

「ああ、そうそう。やっぱそういう風にあいつ言ってんだな。競技種目違うってのに」
 

しっかり日焼けした、でもちょっと皐次郎君とは違った雰囲気の永井君は白い歯を見せて笑ってくれた。

なんとも人懐っこい笑顔で、思わず産まれていた警戒心が消えてゆく。


「で、皐次郎に用?」
 
陸上部のエースだというのに全然知らなかったなんて、と自分の疎さに少し凹んでいると彼が聞いてきてくれた。
 

確かに皐次郎君にお菓子を渡したかったのだけれど、やはり練習中には申し訳ないと思ってしまう。


「うん……でも声かけにくいかなって」

「え、そう? 呼んで来てやろうか?」

「ううん! いいです。頑張って練習してるのに邪魔しちゃうから」
 

永井君の気軽さに思わず腰が引けてしまって急いで断る。

「別に大丈夫なのに」と笑ってくれるけれど、横目に映った皐次郎君の姿はやはり鳥のように綺麗だったから。