16歳、前進

その動きが、綺麗だった。
 
今まで陸上競技をしっかりと見る機会なんてなかったけど、なんとなくどんなものかは知っていた。
 
だけどそれ以上に彼の走る姿が綺麗で、流れるようにぎりぎりにハードルを越えていって。

 
その真剣な顔つきからも、彼がどれだけ必死に打ち込んでいるのかがわかってしまった。
 
だからか、思わず足が止まる。
 

あんなに頑張っている中、私なんかが声をかけていいのだろうかって。
 
既に顔がしっかり見えるぐらいの距離にいる、でも皐次郎君は私に気づかない。

それほどまでに集中している最中、切ってしまっていいのだろうか。



「ん? 陸上部になんか用?」
 
迷っていると後ろから声をかけられた。

びっくりして振り返ると、皐次郎君と同じようにスパッツを履いた男の人が立っていた。


「あ……いや……」

「って、ああ。皐次郎のクラスの子じゃないっけ?」
 

全く知らない人だったせいもあって、別に悪いことをしているわけじゃないのにそんな気分になってしまった。
 
けれどそれをかき消すかのように首にタオルをかけた人が笑ってくれる。