何を言われたのか、一瞬解らなかった。

頭では、理解できなかったくせに、身体は反応する。
ドクンドクンと脈打ち、血液が逆流するように、頭の中が熱くなってくる。

黙ったままの私に、目の前の少女は怯えながらも、しっかりと見つめてくる。

その潤んだ瞳に、ごくり、と生唾を飲み込む。


―ヤバイ…―


理性が崩れ去ろうとしているのが、分かる。

固まったまま、喋らず動かない私に、カオは何を思ったのか。

「リヒトさん…」

震える声で、ソッと囁くように名前を呼ばれる。
微かに、怯えを含ませた手が肩にゆっくり触れてくる。

「───っ!」

触れられた瞬間、理性が喰われたのを、知った。