先輩……



練習着がそんなに汚れるくらいに一生懸命練習してたのに



私の所まで走って来てくれたんだ。




疲れてるのに……




私は、先輩の姿を確認すると



ガタッと勢い良くイスから立ち上がった。




「あ…い…忙しいのに、ごめんなさい!!」



私はギュッと目を瞑って俯いた。




緊張する……




そんな私に先輩は静かに近付くと、クスクスと笑った。




「忙しくないよ。それより、用事って?」



「……っ…あの…これ…」



私は汗ばんだ手で持った、一応綺麗にラッピングしたチョコを前に突き出した。




「バレンタイン…デー…だから…作ったんで、良かったら…食べてください!!」




勇気を振り絞ってそう言うと、先輩は柔らかく笑って



「これ…詩織が作ったの?」



と言った。



「は…はい…」



「すっげえー!!今年初だよ!!ありがと!!バレないように部室に持ってくよ!」



「…はい……」



私は先輩のその笑顔を見て真っ赤になって俯いた。