消え行く花のように

(―16―)




重い静寂につつまれるなか――



ミカエルの目を睨み据えたまま考えあぐねている俺の耳に、不意に、小さく消えいりそうな声が聞こえた。

「逃げて……ジュード」

羽交い絞めにされ、剣先を喉元に当てられたリエルの震えるような声。

「リエル」

見やると、ただでさえ白い顔を更に青ざめさせたリエルが、か弱い笑みを浮かべて俺を見つめている。

「いい……の、わたしは……もう…… 」

「……?」

そのとき初めて、リエルの様子がおかしいことに気が付いた。



――ポト……



かすかに耳に入った、何かが滴り落ちるような音。







そして


嗅ぎ慣れた、匂い……