消え行く花のように



キッチンの奥のドアの向こうに感じた気配に手を止める。

(……なんだ?)

神経を研ぎ澄まし、部屋の周りの気配を探る。

この部屋に向けられる、敵意。

その数はひとつや二つではない――

「囲まれてる?」

つぶやいた瞬間に思い当たった。

(そうか、あの時)

己を失い、暴虐を尽くしたあの日、怯えて自分を見つめる若い憲兵をそのままにして去ってしまったのを……

(記憶を消すべきだったな)

見られていたのは分かっていたが、あの時は平常心を失い、通常なら怠らない後始末をつけずに場を去ってしまった。

(まいったな)

軽くため息をつき、そっと水差しをキッチンの流しのなかに置く。





「迎えにいく前に、一仕事だな」