――ドンッ
誰かと肩がぶつかる。
「すまない」
ひとこと、そういい残し通り過ぎようとしたが、腕をつかまれ止められた。
「なんだその態度は。だいたいこんな時間にふらふらと……何をしてる?」
威圧的な声の方を振り返る。
朦朧とする意識のなか、冴えた視界に鮮明に映る『人間』の姿。
詰襟を着て、肩から長い銃を吊るした男。
(夜間見回りの憲兵か)
腕をつかんだまま、自分を睨むその男に
「触れるな」
そう言い、大きくつかまれた腕を振り払うと、はずみで男の顔を爪で引っ掻いた。
「つ……っ」
痛みに顔をしかめる男の頬に、うっすらと滲む血を見た瞬間……

