消え行く花のように

(―7―)



「先に出るぞ」

バスタブに浮いた泡で遊んでいるリエルを残し、先に風呂から出てローブを羽織ると、俺はキッチンの戸棚から買い置きの果実酒を取り出し、喉に流し込んだ。

今日は何故かやたらと喉が渇く……

(そういえば、だいぶ『食事』を取ってなかったな……そろそろ、やばいか?)

しばらくの間、あまりに平穏で忘れかけていた自分の本性を思い出し、俺は軽くため息をついた。

――人の生気なしでは生きていけぬ種族

暗殺者という職業は俺にとって格好な仕事だった。

人並み外れた能力を持つ俺にとって、人を殺すのは簡単なこと。依頼を遂行すれば金も手に入り、人にまぎれ暮らしていけるうえに、『食事』にもありつける。

今までは仕事がないときは、盛り場へ出て行き、適当な獲物を見つけ、死なない程度に生気を得ていたのだが……