消え行く花のように

(―6―)



しばらくは仕事もなく

静かな日々が続いた――


毎晩同じベッドに眠る。

最も、リエルのほうが先に寝てしまうのだが、リエルが眠りに落ちた後も、その静かな寝息を背に聞きながら、遠き昔に思いをめぐらしたり……本に目を通したり……

時折、寝顔を眺めたりしながら、やがて夜が明ける頃、眠りにつくまでを過ごす。

リエルは昼間目を覚ますと、部屋の掃除や花の世話にと良く働き、ひととおりの用事が済むと、眠る俺の隣で絵を描いたりして、おとなしく俺が目覚めるのを待つ。

俺が目を覚ますと、ふたりで日が落ちた街を散歩したり、買い物にでたりした。

夕食をとるリエルの隣で俺は酒と煙草を楽しみ、食事の後は共に風呂に入る。

痩せたリエルの白い背中には、無数の古い傷跡があった……

今までの生活ぶりが伺われる。

「痛くないか?」

背中を洗ってやりながら訊くと

「もう、全然平気」

リエルはそう言って笑う。