消え行く花のように



「でも、ジュードは優しいもの。私、こんなに良くして貰ったこと今までないもの」

そう言うと、リエルは俺の首に両腕を巻きつけ肩に顔をうずめた。

「人間じゃなくても、天使様じゃなくても、ジュードがいちばん優しい……」

リエルの静かな鼓動が、人並み外れた聴覚を持つ俺の耳に届く――

「怖くないのか? もしかすると本当に悪魔かもしれないぞ?」

なんともいえない気持ちに襲われ……それを打ち消すように、笑いながらつぶやいてみるが、

「怖くなんてない。私はジュードが好き」

少しのためらいもない、その言葉を聞くと、何故か、もう何も言えなくなってしまい……

「本当に、ありがとう」

そう言うリエルの髪を、ただ、そっと撫ぜるしか出来なくなってしまった。

(たかが、人間の子供)

そう思いつつも……

揺らぎ一つないその静かな鼓動は、とても心地がよくて……