消え行く花のように



リエルが選んだのは、特に何の変哲もない黒いロングコート……

「ちょっと地味なんじゃないか? もっとかわいいのもあるぞ?」

眉をひそめて尋ねると

「これが、いい」

今度ははっきりとそう言った。

「ジュードと、おそろい」

言われて、自分の着ているコートを見ると、確かに良く似た形だ――

「こんなのがいいのか?」

「うん」

念を押すように再び尋ねてみたが、思い切り笑顔で返され、戸惑いつつもリエルの希望どおりに、そのコートを店員に手渡す。

「おかしなやつだ……」

つぶやく俺にかまわず、店員にコートを着せてもらうと、リエルは鏡の前へと駈けより、うつった姿を見て満足げに微笑んだ。