消え行く花のように



「じゃあな」

用事が済んだので帰ろうとドアの方へ振り返ると、リエルが何かを見ているのに気がついた。

視線の先には、積み重ねられた本の上に、この店にはおよそ似つかわしくない……
白い小さな花が咲く、植木鉢――

「ああ、それかい? 随分前に誰かが忘れていったんだ。欲しいならもっていってもいいよ」

カウンター越しにリエルの様子に気がついたガーフィールドがにこにこして言った。

「いいの?」

「ああ。取りに来る様子もないし、お嬢ちゃんみたいに可愛い子に面倒見てもらったほうが花も喜ぶさ」

リエルが俺の顔をうかがうように見上げる。

「欲しいなら遠慮なくもらっとけ」

俺の言葉を聞くと嬉しそうに顔をほころばせて、両手に収まるほどの小さなその鉢を手に取り、ガーフィールドへ軽く頭を下げた。

「なんのなんの」

嬉しそうに手を振るガーフィールドに

「ありがとう」

リエルがちいさく礼を述べるのを聞きながらドアを開け、店を後にすると、早速その足で洋服屋へと向かった。