消え行く花のように



赤い皮表紙に金の文字で〔ウィルダネス創世記〕と書かれた、古い分厚い本を受け取り、真中に挟まれた茶封筒を抜き取ると、本をカウンターへと戻す。

茶封筒から一枚紙幣を抜き取り、ガーフィールドへ渡し、次の仕事の連絡を頼んだ。

一見、うだつのあがらない古書店の店主も、軍専属の情報屋。暗殺などという物騒な仕事柄、軍が直接俺に連絡をとることはない、仕事の依頼も報酬の受け渡しも、いつもガーフィールドを通す。

この世界で人に紛れ生きてゆくためには、ある程度の収入が必要だ。

ガーフィールドはその掛け橋となる。

今の俺にとっては関わりある数少ない人間の一人だ。

必要以上の余計な詮索をしてこないわりには、気さくに客を迎え入れて気を使わせないのは仕事柄か、もしくは持って生まれた天性か?

どちらにせよ、俺のように後ろ暗い素性の者にはガーフィールドのような存在はありがたい。