消え行く花のように



「よし。入ってよろしい」

そう声をかけると嬉しそうに顔をほころばせ、差し出した俺の手をとり、おずおずと小さな身体を隣に滑り込ませる。

手を離そうとしないので、空いたほうの手で毛布をかけてやると再び小さく息をはきだし、リエルはつぶやいた。

「本当は、お礼、はあんまり好きじゃない。痛いから」

「……子供のくせに無理する必要はない。少なくともここではな」

「ありがとう、ジュ―ド」

安堵の表情を浮かべると握っていた手を、ぎゅっと強く握る。

「ジュードの手、やっぱり、冷たいね」

そう言って少しもしないうちに、目を閉じて、すぅすぅと小さく寝息をたてはじめた……

(だいぶん疲れてたようだな)

無理もない――

どういったいきさつで、あんな場所で縛られていたかはわからないが、ろくな目にあったわけではないのは目に見えている。

(まだ、こんなガキなのにな……まあ、今はこいつに限ったことじゃないが)

リエルに限らず、住む場所も保護してくれる者も失い、路頭をさまよう子供は大勢いる。

戦争と内乱が子供たちからそれらを奪った。

(哀れなものだ……)

そんな事を思いながら、遠い昔を思い出すと、なんともいえぬ空虚感に襲われた。