消え行く花のように




「おい、何してる? 風邪ひくぞっ……!」

慌てて止めようとすると、リエルは

「お礼、しなきゃ」

そう言って小さな唇を噛み、うつむいた。

「親切にしてもらったら、お礼しなくちゃ。でも私、何も持ってないから……コレくらいしか……」

まだ小さなこの少女が、何をしようとしてるのかを悟り、俺は深くため息をつくと、彼女が脱ぎ捨てた服を拾い、その手に持たせた。

「あのなあ……今までどんな目に会ったかは知らんが、俺はそんなお礼なんていらん。お前を拾ったのだって只の気まぐれだし、いつ気が変わって追い出すかも知らん。だいたいお前年はいくつだ?」

「……12歳」

リエルは不安げな顔でおずおずと答える。

「12だと?ばかげてる。そんなガキに手を出す趣味はねえよ」

はきだすようにそう言って、俺はリエルに背を向けた。

「服を着な。そしたらベッドに入れてやる。子供はおとなしく寝る時間だ」

背中越しに、リエルがほっとしたように息をつくのが聞こえ、服を着る気配がわかる。

様子を見計らって振り向くと、リエルはちゃんと着ていた服を身に付け、少し恥ずかしそうな顔で立っていた。