皿に盛られている肴が猛烈な勢いで消えて行く。私は紫煙を吐き出して煙草の灰を灰皿に落としていると、関が「ごちそうさん」と短く言葉を掛けて来る。
「満足したかい?」
「おう。美味い酒に肴、最高の気分や」
「そう云えば、わざわざ連絡をして店に来るなんて、どう云う気分の変化なんだい?」
「別に他意はあらへん。少し無駄話をしたくなってな。折角来ても居てなかったら無駄足に成るやないか」
「珍しい事も有る物だ」
「まぁ、無駄話と云うよりは、時雨の意見を聞いて見たいって云うのが本音やねんけどな」
「余計に驚くね」
「人の話は最後迄聞くもんやで。稀に、人の話を最後迄聞かんと、ツマランだとか何だとか色々な理由で適当に話を合わせる阿呆はいとるけどな」
 言外に、知ったかぶりの人間を痛烈に批判している。私は黙ってグラスの中の酒を煽り、関の言葉を待つ。
「しっかし、音楽も何も無いと寂しいな、TVでも点けてくれへんか?」
 私は関の申し出を受けTVの電源を入れ、見慣れたニュース番組にチャンネルを合わせる。画面には、特番と云うテロップが赤い文字で毒々しく踊り「今、学校で起きているイジメ」と云う題名が記されている。
「またイジメ問題かいな」