琥珀色の液体。コイツだけが私の人生を支えて来た本当の友人と云う訳だ。私は照明にグラスを翳して天井を見上げていると、視界の端に人影が写り視線をそちらに走らせる。
「よう。久し振りやな」
 ドアに取り付けた鈴が揺れ澄んだ音が店内に響く。入り口に笑顔を浮かべた関和宏が立っている。パっと見た感じでは、ジーンズにストライプのシャツに、色合いを考え抜いた紺のブレザーと云う井出立ち。年齢の掴み難い小粋な服装だが、その服装に相反する様に、若干禿げかけた頭髪からかも知れないが、確実に年齢不詳に見えるが、実際には私とそれ程年齢差は無い筈だ。勿論確認をした事は無い事だが、互いに年を気にする程に若くも無く、言葉の運び方や雰囲気で年齢の当たりを付けているだけだ。
「半年振り、だね」
「もうそんなに成るんかいな?」
「来る時は頻繁に来る割には、来ない時は音沙汰無しだ。気紛れな人だよ」
「気紛れな位で無いと、今の世の中を生きて行く事は出来んからな」
「それで、何を飲むんだい?」
「やっと椅子を勧めてくれたか」
 関がニヤリと薄い笑みを浮かべてスツールに座る。