私は恵の問い掛けに答え、カウンターの外に出てスツールに腰を下ろす。カウンターの外から見る恵は、矢張り慣れてないのが見て取れるが、時間が経つに連れて馴染んで行くだろう。
 妹を雇いたいと思ったのは本心から出た願いだ。オーナーである南條には全てを打ち明けたが、南條は別段気にするでも無く、売上の中から遣り繰りするので有れば異論は無いと簡素な答えが返って来た。私は偽善的な行為は嫌いだが、自分の周りに居る人だけでも幸せにしたいと、最近ではそう思い出している自分の心に従う様に、恵に店で働かないかと提案した。当然恵は困惑と同時に辞退する旨を伝えて来たが、今の仕事でまた擦れ違う日々を送るよりは良い筈だと苦言して、なし崩し的に承諾させた。  
 同じ過ちを犯して欲しくない。兄として名乗る事は出来無いが、兄としての責任は果したいと云う思いが、私を突き動かし恵を雇うに至った。
 時が過ぎて行く中で、人はその場に応じて考えが変わる事があるが、それは別段悪い事だとは思わない。大切な事は、愚かな行為に及ばない様に気を付ける事だ。