流れて行く時間の中で、私は何を見て生きて生きたのだろうか。弱さを見せる事が恥じだと思っていた若い頃。自分を中心に世の中が回っていると勘違いしていた子供の考え。有りえない事だが、今の私が過去の私と話す事が有ったとしたら、如何云う苦言をしたのだろうか。無駄な事なのは分かっている。言葉も通じない位に欲望と自己顕示欲に見せられた過去の私は、結局破滅の道を選んだ事だろう。
―難しく考える事は無いのさ
 選んだ道が出した一つの結論。素顔を晒す事も無く、真実を伝える相手も居ない日々の中、私は南條と出会い人並の生活を手に入れ、本音を云わない事で、ただ一人だけだと思える友人である関と付き合う事が出来た。だが、心の中の何処かで妹を捨てた罪に責められていた。平和を求め乍罪から逃げる隣り合わせの日々。そんな毎日の中、偶然が折り重なり絡み合い乍も過去を清算する切欠が訪れ、私は私の罪と向き合う事で、綺麗に過去の罪の清算をした積りは無いが、一つの蟠りを消す事が出来た。
 私はカウンターの中から外を眺める。夕方の街は曇り、空からポツポツと雨が降り出して来た。皮肉な物で、雨の日に全てを失い、本来なら雨等は嫌いの筈が、降り出している雨に喜んでいる。過去を洗い流す事が出来た。そう思える程に心に余裕が出来たのかも知れない。