最終章 向き合う事
 私はカウンターの中で業務に勤しむ毎日を送っている。二十数年と云う歳月を逃げる事で生きて来た時間を振り返ると心底うんざりとするが、原因は自分に有るのだから仕方が無いと思い半ば諦めた日々を送っていたが、今の私にはそう云った腐った思いは無い。誉める事が出来る人生では無く、罪から逃げる事で生きて来た自分が今では馬鹿らしく思えて来る。この数日間、私の身の周りで起きた事件は私の罪を償わせてくれただけでは無く、人間とは何かを考える時間をも与えてくれた。あの事件が終わった後、恵は正式に離婚が成立し、新崎姓へと戻ったが、無論、私が名乗り出る事は無い。
 ふと振り返っても俄かには信じられない内容の数々だったが、私はその中で大切な事を教えられもした。人を信じる事の大切さと、その大切さに比例するかの様に、裏切りと欲望に流され易い人間の愚行の数々。だが、人は人を蹴落とす事で成長して来た事は否めないが、それだけでは無いと云う事も色々と教えられた。罪を犯す前、若しもそう云った事を全て分かっていたのなら、決して恵を捨てる事も無かっただろうし、強盗殺人等と云う罪を犯す事も無かっただろう。