関の説得に私は頷く。確かに関が止めなければ、私は山本を殴り飛ばしていた筈だ。一回殴り倒すと、血が沸騰して見境無しに暴れまわっていた過去の私に立ち返ってしまう。
 私達が遠巻きに見学しているのを無視して富田が話を続ける。
「お前さん、一人で騒いで楽しいのか?」
「な、何を云ってるんだ!」
 山本が困惑の表情を浮かべて富田に絡む。だが、当然と云うか当たり前と云うべきか、富田は動じる事無く懐に手を入れ、さっと山本の顔面に黒い手帳を突き付けると、山本は黙り込み直ぐに笑みを浮かべて話し出す。
「アンタ刑事か?それなら話は早い。俺はこいつ等に拉致されたんだ」
 山本が勝ち誇った声で朗々と歌い上げる様に非難して来る。富田が自分を助けてくれると思っているのだろう。何も知らない人間の行動とは本当に目出度いと云うか滑稽だが、そう云った情報操作をして葵を追い込んだ本人だと思うと心底哀れに思う。情報を操作し人を蹴落としていた山本が、今は情報に踊らされている。