「ワシは別に偽善者の真似事をする気はあらへん。それに弱い者イジメもや」
 関の偽善者と云う言葉に山本はピクリと反応した。頭の中で現状を吟味しているのだろう。伊達に今の地位迄上り詰めた訳では無さそうだ。衰弱した物真似でチャンスを伺っているのかも知れない。関もその辺りを察し、言葉を選んで切り込んで行く。
「せやけど、アンさんは随分と手の込んだ真似を色々としとる見たいやな」
「なにが云いたいんだ……」
「人間賭博ってのは、そんなに面白いでっか?」
 静寂が辺りを支配する。私の耳には山本の息遣いしか聞こえない。だが、私は本心が知りたい。如何云う経緯で葵が標的に成ったのかだ。それを知らないと寝覚めが悪い。関の方が私以上に情報を保有している筈だ。その上で如何云う風に聞き出すか見物ではある。
「お前、何者だ……」
「ワシの事等はどうでも良い事ですわ。そんな瑣末な事以上に、アンさんが加担しとる内容の方が問題有ると思いますけどな」