低く通る声だ。言葉だけで確実に山本を追い込んでいるのが分かる。言葉とはこんなにも恐ろしい物なのか。情報を握っている人間と握って無い人間とでは、駆け引きの上で圧倒的な差が出るのが関のやり方を見ているだけで嫌と云う程に思い知らされる。 
「事実無根だ!」
「随分厳しい云い逃れですな」
「真実を云った迄だ……」
「子飼いの犬に覚えが無いと云いたげですな」
「身に覚えは無い!」
「それならこいつはどう説明付ける気でっか?」
 関は冷徹な瞳の侭で懐に手を差し込み一枚の紙片を取り出す。富田の車が照らし出すフォグランプの中、ボンヤリと浮かび上がるのは山本の名刺だ。
「それは……」
 言葉の先制攻撃の次は物理的な攻撃。関は波状攻撃で山本を徐々に追い込んで行く。山本は答えに窮し黙り込んだ侭で逡巡する。