車中のディスプレイの時計が二十一時を越えている。男の居るビルには引っ切り無しに人が出入りする。張り込みの間、交代で休憩を取り乍もチャンスを逃すまいと見張り続けている。  
 今日で蹴りを付ける。若し男が出て来ない際はこちらから乗り込むしか無いが、関の話では男が会社に宿泊する事は無いと云う。ならば今日で蹴りが付く。視界の端、街灯の光の中に微かに影が動いたのが分かる。
「……和さん」
「アイツや。人数は全員で四人か……予測範囲や」
 関の言葉を切欠に外に出るとバイクに跨り薄皮の黒い手袋を付ける。この道は交通量も多く、路肩で車を止まて仕事をサボっているサラリーマンやタクシー等は吐いて捨てる程だ。
 GSX250R。スポーツレプリカで街を流すには適しているし、バイクなら族の頃に嫌に成る程乗っているから車よりも扱い易い。