ドアが開かれ事務員が丁寧に挨拶をし、宅配の若い男性がオーダーした品を何処に置くか尋ねる。男は自分のデスクだと軽く指示を出し千円札を取り出し渡すと、五月蝿そうに顔を歪める。心中穏やかでは無く、表面的には出さない様に気を付けていたが、如何しても顔に出てしまう。男から代金を貰った宅配の男は会釈をして立ち去ると、男は銀髪を軽く掻き上げ溜め息を付き、テーブルに置かれた定食を食べ様とするが胃がムカムカとして来る。何度か箸を往復させるが途中で食べるのが嫌に成り椅子に背を預ける。後数日の辛抱だと自分に云い聞かせるが、精神的なヴァランスは完全に崩れている。追われる側の心理とはこの様な物なのか。男は漠然と自分が置かれている状況を考え乍、浅い眠りに落ちて行く感覚に身を委ねる事にした。