決断するや忙しない動きで関の事務所に移動した。片桐が用意していたのは黒のワゴンタイプの車で、手馴れたハンドル捌きで関の事務所の下に着くと、急いで雑居ビルの五階の部屋へと移動する。深夜とは云え人の眼は気にした方が良い。少女を抱えた中年に差し掛かったと云える団体がウヨウヨ動けば通報されても文句は云えない。
 だが、ふと冷静に考えた際に私は有る事に思い至る。関が住んで居る事務所に来るのは初めてだが、それも当然と云える。今回の事件が無ければ、関と此処迄深い関係には成って無い。それは、私が意図的に距離を取るのも有るが、それとは別に逃亡生活から来る本能が言葉を選ばせている部分は否め無い。深く知り合い過ぎると、別れる際に辛い思いをするだけに成るし、詮索される切欠に成る。だが、今夜を境に私の中の何かが変わって行くのが分かる。
 事務所前の扉。関が入り口を開け手早く私達を招き入れ、数分後に片桐が男を抱えて入って来た。堂々とした態度の為に、傍目には酔っ払いの先輩を介抱している後輩の様にも見えるから不思議な物だ。片桐曰く「下手にコソコソするから目立つ」との事だが、その一線を越えるのは並大抵の度胸では出来無い。