関は軽い口調で話をしてはいるが、身体自体は本調子では無い筈だ。その上で相手の心の負担を軽減する為の言葉を選んでいる。関のそうした何気無い優しさが好きだ。関と恵は互いに初対面だが、関の方から堅苦しい空気を和らげて行くのが良く分かる。私はそんな二人を見乍珈琲を入れる準備をする。今から話をするならテーブルの席でする方が良い。私は二人にテーブル席に行く様に促し、自分の分も含めた珈琲を用意する。その間、二人は社交辞令的な挨拶を交し、関が葵の容態に付いて説明をしている。二階の部屋で寝ている娘の事は無論気に成るだろうが、それも踏まえた話し合いに成る。私は煎れたての珈琲をテーブルに運び席に付く。
「さてと。取り合えず現状を説明するで」
「容態はどんな感じなんだい?」
「一応は安定しとるな。やけど、魂の抜け殻に近い状態や。親御さんと引き合わせても、本人には自覚出来んと云うか、殻に閉じ篭ってもうてるな」
「治る展望は?」
「キーワードに成るのは、小夜子って子の回復や。ワシが保有しとる情報を元に、色々な症例に照らし合わせたけど、恐らく小夜子の怪我が、娘さんの心の負担と云うか、自分が原因で大怪我をさせたと云う精神的な鬩ぎ合いで、心の中の迷宮に迷い込んどる感じや。その上で今回のゲームのコマと成ってしまっとるから、普通に考えて、心が打ち砕かれても可笑しくは無いわ」