「い……いやだ……」
 少年が微かに喋ると、抱き抱えている男が胴の部分を激しく締め上げて黙らせる。葬儀の様に静かなワンシーン。最上階の十階。男達は静かに少年を屋上の中央に下ろし、給水等の上に座る男を見上げる。
「上出来だ」
 銀髪の男が笑顔を上げて給水等から降り立つ。
「年齢・風貌・生い立ち・全て合格だ」
 銀髪の男が意味深な言葉を吐く。喧騒が溢れるビルの屋上は、そこだけが映画のワンシーンの様に、凛とした空気が流れている。
「じゃあ、俺達はこれで。貰う物を貰えば去りますよ」
「ああ。約束の五十万だ」
「頂戴します」
「くどい様だが―」
「分かっていますよ。他言は無用って事でしょ」
「察しが良い。今のタイミングから仕込んだとして、どれだけの金が動いて、何時発見されると思うかね?」
「僕達は何も知りませんよ。只、小遣いが貰えるだけです」
「懸命な事だな。頭の回転が良い事が、非常に素晴らしい事だと君を見ていると思い知らされる」