「詳しい説明や出典は自分で調べてくれたら良いけど、簡単に云えば、犯罪行為に対して行なう方法論やな。苦痛を与えられた相手には、それ相応の代償を払わすと云う意味や」
「因果応報って所か?」
「まぁ、大体の意味合いはそんな所やな」
「難しい、な」
「そんな事は無いで。教育委員会が公表しているデータ―では学校内ではイジメは無いと公表しとるけど、実際には腐る程有るからな。大人が自己保身の為に率先してデータ―の改竄をしているのを見るだけでも、イジメ撲滅の難しさは手に取る様に分かるやろ」
「確かにそうかも知れないな」
「ほんまに阿呆ばっかりやと思うわ。それに、年々イジメは陰湿に成って行く一方やしな。果たしてこの侭で良いのかどうかは、議論を残す部分が多いわ」
 関はポツリとそう呟き、懐から煙草を取り出して一服点ける。関には私には分から無い社会の深い部分が見えているのかも知れない。そうだとしたら、私の心の底も見抜いているのだろうか。不意にそんな気持が心に広がって来る。表立っては公表出来無い私の過去。関が私の過去を知ったらどう云う態度を取るのだろうか。取り留めの無い考えだ。私は心の中に広がる暗い闇を振り払う様に、グラスに入っている酒を一息で煽る。だが、グラスの中の酒は氷で薄まり、私の心の闇を溶かす事は出来無かった。
「まぁ、そんな話はどうでも良いわ」
 関は暗い雰囲気を断ち切る様に、今迄の暗い空気を言葉で切り捨てると、TVのチャンネルを忙しなく操作し乍惚けた口調で「それでや、今日来たのはなぁ」とTVを見乍話し出す。
「そう云えば本題は何だい?」
「……なんやったかいな?」
「私に聞かれても困るな」