――錆びに錆びた包丁。 虫の這うまな板。 悪臭立ち込める冷蔵庫――… 「何ココ。」 立ち尽くした私の横で、 ヒラヒラと、着ている着物の袖を振る喜代。 「何って……キッチンだよ~?」 「嘘でしょ!」 さも同然のように言いのける彼に、 私は思わず叫んだ。 だってだって…… 「この酷さはないよ……」 キッチンだと喜代が案内してくれたはずの空間は 既にキッチンなんて呼べないもので。 料理する、という大前提を 完全に忘れ去られたような…… 不衛生極まりない、砕けた部屋。