――怖くなくなったわけじゃない。
でも、貞子の話を聞いて
あぁ何も人間と変わらないのだと思った。
美しさを求めて、自分ではどうしようもなくなって
人間でも妖怪でもない存在。
貞子がここにきたのは
ただ人間と関わりたかったからだ。
そんな彼女を怖がって、追い返したりなんてできない。
だって、初めてのお客さんだもの。
貞子は、何度も何度も「ありがとう」と言った。
背の高い彼女の髪を拭きながら
うんうん、と頷く。
ようやく乾いてきたところで、
凜がトレーにミルクティーを乗せて現れた。
「お待たせいたしました…」
凜が怪訝そうな目で私を見る。
その視線は、明らかに「何やっているんだ」と伝えていた。
思わず苦笑いを返す。
(怖い怖いと言っていたくせに…
一体どういう心境の変化だ?)
(あ…あはは、や、何かね。)
私を睨みながらも凜は、どこか嬉しそうだった。
