「オイっ…こま、」
「凜。」
凜を振り返ると、彼は戸惑った表情で
私に手を伸ばしていた。
反射的だったのかどうか分からないけれど。
そんな凜に笑顔を向けて、
「大丈夫」だと示す。
「ね、凜。ミルクティー持ってきてよ。」
「な…」
「温かいやつね!ほら、久しぶりのお客さんでしょ?」
「あ…あぁ、」
その場から離れるのをしばらく躊躇っていたが
私の言葉に渋々頷くと
踵を返して部屋から出て行った。
部屋にいるのは、私と貞子の二人きり。
部屋の空気はやっぱり暗くて湿っていて
不気味で仕方ないけれど
さっきよりはいくらかマシになった気がする。
「長くて綺麗な髪だね。」
「あ、ぇあ、」
「…怖がってごめんなさい。」
ゆっくりと、貞子が頭を上げる。
真っ赤になって、今にも涙が溢れそうな目に
私が映っていた。
そして、ふるふると首を左右に振る。
「いいの…いいの。」
「ありがとう…っ」
ポロっ、と彼女の目から涙が零れた。
