何で、こんなこと言ったんだろう。
でも嘘ではないよ。
本当に、間近で見た貞子の顔は
口を除けばとても美しかったから。
私の口元に、自然と笑みが浮かぶ。
「う…」
「嘘よ…。」
うろたえる貞子は、オロオロと視線を左右に泳がせる。
まるで信じられないと言ったように
私の方を見ようとしない。
けれどみるみる赤くなっていく彼女の顔は
どうやら嘘は吐けないようだった。
「ふふっ!大丈夫。
マスクで顔を隠して…」
マスクを貞子に手渡してつけさせる。
手に持っていたままのタオルを貰うと
私はそれで彼女の長い髪を大雑把に拭いた。
「風邪、引くよ。」
「……っ!」
頭を項垂れたままの貞子が、
一瞬私に視線を向けた。
まるで、泣きそうな顔をしていた。
