「ご…ご、ごめんなさい…
やっぱり、怖い、ですよね…」
「え――…あ、」
そんなことないと、嘘は吐けなかった。
隣の凜をそっと見上げる。
彼は首を傾げて私を見つめる。
私は、ギュッと自分の手を握りしめた。
そして、一歩。
一歩ずつ、貞子の前へ歩み寄っていく。
「確かに…ちょっと、最初はびっくりしたけど。」
「…?」
私よりも遥かに身長が高い貞子は
この距離に驚いたように一歩身を引いた。
しかし視線は、ちゃんと私を見つめていた。
「でも、綺麗な女の人だよ。」
自分の言葉に、少しだけ驚いた。
体が勝手に動いて、そんなことを口走って。
目を大きく見開いた貞子は
動けずにその場で固まっている。
背後で凜の「は?」といった声が聞こえた。
