楼の背で揺られながら、 急な傾斜をどんどん駆けあがっていく。 後ろを振り返れば、もう町は見えなくて。 私が今まで住んでいた世界が 遠ざかっていくような感覚に陥る。 無意識に、ギュッと漆黒の体にしがみついた。 「人間の世界にいたいのなら、」 「え――」 「今すぐ、引き返せ。」 まるで私の不安を諭すような言葉。 そして楼は、急にその場で足を止めた。 「何で、止まるの…?」 「お前、迷ってんだろ。」 「そんなこと…!」 言葉ではそう言うけれど、きっと今の私の顔は さぞかし情けないだろう。