「・・・あんなことを言っておいて、誘っているのか、お前は」

「いいえ」

「じゃあ何の意味があるというのだ」

「何の意味が、あると思いますか?」

最後に堪忍袋の緒が切れたらしい彼は、私を仰向かせて、その上に乗ってきた―――さすがにこれにはびっくりしたけれど、胎に圧し掛かられているわけではなかったのでお芝居を続けることにする。

「まぁ危ない、これからは気を付けてくださいな」

何をされても、紅藤様がどんなに怒っていても、自然と頬がほほ笑みの形を作るのは、きっと、今彼に意地悪して隠していることの所為。

彼は、それでも変わらず本質を伝えない私に、目を座らせて言った。

「・・・気が変わった、このまま、抱く。覚悟しろ、今日は寝かせてやらん」

完全に悪役の口調になった紅藤様に、これ以上楽しんでいると本当に危ないことになってしまうと思い少し焦って、私に口づけしようとする彼の手をもう一回胎のあたりに持って行って、不機嫌度数が最高潮に達した彼に、ほほ笑んで、言った。



「赤ちゃんが、できましたのよ」



いろんな修羅場をくぐりぬけて余程のことでは動揺しない彼も、さすがに驚いたらしくて動きが綺麗にぴたりと止まって、目が大きく見開かれて―――今まで見たこともないような、虚をつかれた顔をした。

「今、」

「はい?」

「今、何といった」

「赤ちゃんが、できました、と言いましたわ」

そうすると、彼は途端に私の上から退き、先程のように、いや先ほどよりももっと優しく壊れものを扱うような手つきで、私を抱きこんだ。

「悪い、いや違うお前はどうしてそう、大切なことをもったいぶって言うんだ、いやそうじゃない大丈夫だったのか今の!?」

今まで見たこともないくらい慌てふためく彼が面白かったけれど、少し落ち着いてもらうために、あれからはたまにするようになった、私からの口づけをする。

と、彼ははぁーーーーーと大きなため息をついた。