気付くと、私は以前のような悠々自適な生活に戻っていた。

召使いたちと一緒に、花を愛でたり、音楽を愛でたりして過ごして、夜には帰ってきた紅藤様を甘やかして、休日には紅藤様と一緒に買い物に出たり、映画を見に行ったり、食事に出かけたり。

今度こそ、これが一生続くのだろうという確信が胸をよぎった。

もう、私は尋の幻影になんて、捕まらない。

紅藤様だけを信じて生きていく。

それが、一番、何よりも確かな常識だと、わかった。